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九州技報 第40号 トピックス

一般国道269号天満バイパス

  ~都市渋滞の解消と景観検討による道路計画~

宮崎県 井上 和彦

宮崎県 榎本 彰朗

 

1 はじめに
宮崎県の政治,経済の中心地として発展している宮崎市は今年1月1日に隣接の3町と合併し人口36万3千人の新たな『宮崎市』として発足しました。国際会議やプロ野球をはじめとするスポーツキャンプの誘致を推進し,国際観光リゾート都市を目指しています。
一般国道269号は,鹿児島県指宿市を起点とし,都城市を経て宮崎市に至る延長約170kmの幹線道路で,本県の産業・経済の振興を図るうえで重要な役割を担っていると伴に,近隣市町村から宮崎市中心部にアクセスする道路として重要な路線となっています。
しかし,現道においては,宮崎市中心部や清武町加納地区で交通混雑が慢性化しており,その緩和,解消が大きな課題となっています。
近年,宮崎市の南西部や清武町においては,大型住宅団地が形成され,特に,市街地の中心部を流れる一級河川大淀川は豊かな水辺空間をつくり,市民にやすらぎと潤いを提供していますが,道路交通体系上は大きなネックとなっており,市内中心部への幹線道路や大淀川を跨ぐ
橘橋,高松橋では慢性的な交通渋滞が発生しています。
このため,宮崎市の中心部から清武町加納地区までの交通混雑を緩和し安全で円滑な交通の確保を目的に一般国道269号のバイパスとして『天満橋』を含む『天満バイパス』とこれに接続する『加納バイパス』(平成19年度供用予定)の延長5.1kmを4車線のバイパス道路として整備しており,そのうち天満バイパスが平成18年3月に供用開始しました。

参考図-1 宮崎県幹線道路網図
 

写真-1 大淀川に架かる天満橋
 
今回完成した天満バイパスは,起点の宮崎市大坪町から終点の宮崎市松橋に至る天満橋を含む延長2.1kmの区間で,宮崎市中心部の渋滞を緩和し,交通安全対策や幹線道路としての機能をより充実させ,地域発展に大きく貢献することが期待されていました。
また,天満橋は,市街地で大淀川に架かる橋としては10番目の橋となります。文豪『川端康成』が夕映えの美しさを絶賛したように,大淀川は宮崎を代表する景勝地でもありますので,架橋にあたっては『天満橋周辺景観検討委貞会』を設置し,まちの緑や水辺空間と調和する橋全体のデザイン,照明をはじめとする歩道の材質,色彩に至るまで様々な検討を行いました。
【事業の概要】
事業箇所 宮崎市大坪町~宮崎市松橋
延長・幅員 L=2.1km W=25m
(車道4車線 歩道両側4.5m)
事業期間 平成7年度~平成17年度
総事業費 約220億円


2 天満橋周辺景観検討委員会
天満バイパスは,天満橋により大淀川の両岸の市街地を結び,宮崎市の都市計画マスタープランにおいて「緑のネットワーク」に位置付けられている天神山風致地区から大淀川市民緑地といった緑あふれる市民の憩いの場を通過することから,まちの緑と調和した景観を創出する必要がありました。
さらに,天満橋は橋長L=607m(幅員W=25m)と大規模な橋梁であり,市民に親しまれている大淀川を渡河する橋梁であることから,周辺環境との調和が必要であると考え,県では平成13年度に産学官の有識者10名による天満橋周辺景観検討委員会(委員長 藤本廣 宮崎大学名誉教授)を設置し,将来にわたり誰からも親しまれる潤いある道路空間の創出を図る目的で検討を行いました。

写真-2 橘橋南詰め渋滞状況

写真-3 景観検討委員会の状況

 

参考図-2 一般国道269号バイパス
 
バイパス全体の基本方針としては,以下の2つの方針によります。
①観光色の濃い南国情緒の橘通りと対比的な,地域住民のための「くらしの通り道」としての景観整備。
②周辺の沿道景観を活かし「緑の景観軸」として,緑豊かな道路景観整備。
その中でも天満バイパス区間(国道10号~宮崎西環状線)は,「緑豊かな市街地生活空間」を目指し,特に「歩く人」を大切にした景観整備を目指しました。
また大淀川を渡る天満橋~天神山・愛宕山の丘陵景観を景観大拠点と位置づけ,中でも景観の大拠点となる天満橋を中心に景観整備を行っております。
まず歩道においては,歩く人にやさしい自然石を採用し,4箇所にバルコニーを設置しております。また,車道については,騒音対策,走行性の向上のため,排水性舗装を採用をしています。車道照明においては,橋梁上の開放感を確保するため中央に設置しています。
また,親柱においては,橋のボリュームに合わせた存在感のあるデザイン(旧橘橋の親柱に類似)とし,橋梁左岸側には,歩く人の憩いの場として橋詰広場を整備しています。
 なお,委員会では,天満橋の橋面や高欄等の具体的なものは決定せず,基本的な方針を定め,形状や材質,色等,具体的事項は,施工に際して決定していくこととし,道路建設課のHPに検討の状況を掲載し,パブリックコメントを募集したり,宮崎大学の学生に天満バイパスの模型を造ってもらい,検討において視覚的にわかりやすくする等の工夫を行いました。大坪地区の歩道舗装材の材質と配色を決定するために実際の現場で試験施行を実施し,また天満橋の歩道舗装および歩道照明においても,試験施工を実施しイメージどおりの施工となるかどうかを確認し,決定していきました。

写真-4 天満橋歩道(自然石歩道,高欄,照明)
 

参考図-3 路線全体景観のコンセプト


3 天満橋上下部工の特徴
天満橋は,大淀川を渡る橋梁であり,橋長L=607m,幅員W=25mと宮崎市内の大淀川を渡る道路橋としては,2番目の長さになる大規模橋梁であります。
① 下部工の特徴について
架設位置においては,基盤岩の起伏が大きく,橋軸,橋軸直角方向とも大きくうねっているため,河川内の流水部(P2~P5橋脚)に位置する下部工基礎においては,施工の確実性,経済性,施工工程を総合的に判断し,ニューマチックケーソンを選定しました。
さらに,ニューマチックケーソン基礎においては,基礎深さが14.5m~24.5mと深く,従来の有人工法では作業室内の気圧が高くなるにつれ作業効率が低下し,一渇水期での施工が困難となり工事工程が大幅に遅れること,また函内作業時間の管理及び減圧管理を十分に行わなくては潜函病の危険も生じることから,無人化工法を採用し,施工の安全性,効率化を図りました。

写真-5 ケーソン底部の無人化掘削機械

 

 

参考図-4 下部工施工方法

 
② 上部工の特徴について
上部工形式は,経済性・構造性のみでなく,大淀川の周辺環境に配慮した8径間連続PC変断面箱桁橋を採用しました。
橋体幅員が25.0mに対する標準的な室数は3室であるが本橋は2室構造を採用し,また従来の内ケーブル構造であった張出架設PC箱桁橋において,コンクリート桁断面幅を縮小できる外ケーブル構造を併用することにより,上部工荷重の軽減を図りました。
桁高は,4.8m~2.4mと変化させており,下線曲線は2次曲線を採用し,上部工荷重のさらなる軽減を図りました。

参考図-5 上部工 標準断面


4 整備効果
今回完成した天満バイパスの整備効果を検証するために,開通前後の交通量や渋滞調査を行いました。
この結果,大淀川を跨ぐ橋梁での交通量の約1割が天満橋に移行し,朝の混雑時間帯での市街地周辺から市街地中心部への所要時間が最大23分の短縮が図られ,市街地の渋滞ポイント交差点で渋滞長が最大約1.2kmの縮小(参考図-6参照)等,周辺に整備効果が発生している結果が得られました。

 
参考図-6 整備効果(付近渋滞長)
 
5 おわりに
天満橋は大淀川両岸の地域連携のため,昭和初期より地域の方々から建設を望まれていた橋であり,今回の開通により,多くの方が利用されています。
また,開通に先立ち市民団体等による開通イベントも催され,市民みなさんが身近に感じる橋となったものと思います。
開通後は,渋滞緩和の効果はもちろんのこと,朝夕の散歩コースになったり,付近の緑地公園でスポーツを楽しまれたりと,大淀川や付近の風致地区と一体になり,人々に親しまれる道路になるものと期待しています。

写真-6 開通後の天満橋
 

写真-7 天満橋開通イベント
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